パーソナルツール
現在の場所: ホーム 書庫 moichiro 営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第七話

営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第七話

作成者 admin 最終変更日時 2010年04月08日 15時42分

第七話「プレゼンテーションスキルとの出会い」

 

 案件進捗技術研修を受講し、日々の活動管理と期初・各月度・期末でのプランニングが連動して、顧客戦略と実行のしくみが自分のなかで定着してきたころ、もう一つの重要な研修と出会った。戦略的プレゼンテーションプログラムである。第六話でお話した通り、大手アカウント営業マンとしての担当先は、営業所の売上・利益を支えている大手企業ばかりだった。お客さまの意思決定も組織的に行われることが多い。お客さまのさまざまな部門の方との個別の交渉・調整も必要であったが、重要な意思決定は、複数の部門の方が集まっての○○説明会や□△検討委員会などと言ったプレゼンテーションの場を経て、決断されるケースが多くなっていた。特に大型案件の場合には必ずプレゼンテーションが行われるようになった。しかしわたしは、大勢の前でのプレゼンテーションは苦手だった。子供のころから自己紹介などは大嫌いで、大勢の人の前に立つとあがってしまい、しどろもどろになっていた。そしてしどろもどろは、社内のプレゼンテーション大会でも相変わらずだった。

 このような状況でこの研修に出会った。富士ゼロックスの教育部門から、受講するように言われた時は、「この忙しい時に2日間も」と困惑したが、必要性は感じていたので思い切って受けてみた。受けてみたら、「忙しい時の2日間」という時間の投資に対して大きなリターンがきた。

 この研修は、営業活動で遭遇する意思決定の場で、複数の人を短時間で説得するプレゼンテーションを戦略的に成功に導くための考え方と技術のトレーニングだった。「限られた時間で、伝えたい内容をプレゼンテーションの出席者に正しく理解してもらい、その心を動かし、合意へと導くプレゼンテーションを行うために必要な手順と手法」を学んだのである。

 もちろん優れた営業マンは、同様な考え方や技術を自然に身に付けている。しかし、わたしのようなプレゼンテーションが苦手な者には、ある手順に従って準備していく考え方は新鮮だった。こうやれば一定レベル以上のプレゼンテーションは必ずできるという安心感は大きかった。「結局は準備なんだ」と思った。

 また、研修のなかで、自分のプレゼンテーションをビデオに撮り、後で振り返るところがある。自分の姿を直視するのはつらいが、反面、日ごろ見ることができない自分が見えた。自分が気づいていないくせも見えるし、良いところや強みも他の受講者から教えられて気が付くことができた。

 このプログラムの効果を試す機会はすぐ、そして続けてやってきた。まずは城北営業所内のプレゼンテーション大会だった。これは順位をつけるものではなかったが、各職位の代表者が、営業所の全メンバーの前で自分が受注を目指している案件のプレゼンテーションを想定して、演じるという設定だった。私は立候補してチーム代表としてプレゼンテーションを行った。担当する自治体の契約更新の多忙な時だったため、このための準備は、直前の週末に行い、リハーサルは前日の車での移動も含めて行った。この研修を受講していなかったならば、ここまでしての準備はしなかったであろう。結局、プレゼンテーションは成功、「さすが大手アカウント営業」という評価をもらえることができた。わたしの営業所内での「カブ」は上がり、「プレゼンテーションなら渡辺」と呼ばれるようになっていった。

 次の機会は、実際の商談だった。あるお客さまで以前から進んでいた数十台の一括商談で、各社が順次複写機を持ち込み、プレゼンテーションする場が設定されたのである。わたしは習った手順に則って準備を始めた。売上面でも、チームの業績目標達成に大きく影響する商談である。競争を勝ち抜くために、ただ複写機を見せるのではなく、自社の企業力をアピールする大きな土俵で勝負する作戦を立て、準備を始めた。サービスエンジニアのマネージャーや営業推進のスタッフにも準備に入ってもらい、プレゼンテーションの内容を固め、ドキュメントを作成した。当日は、十分な準備のもと臨むことができた。限られた時間内で訴求店を的確にアピールすることができ、プレゼンテーションは成功した。もちろんその商談は受注することができた。

 わたしはこの体験から、ちゃんとした手順に則って、準備をすれば、必ず結果はついて来るという自信を得た。そしてこのことは営業活動のすべてについても言えるなと思った。思い返すと、質問を中心とした面談技術・アプローチブック・予測すること・手帳での行動管理・案件進捗スキルとすべてが同じだった。

 そして「営業という仕事は科学的なんだ」という気持ちがここから芽生えてきた。その後マネージャーになってから、そして営業教育に携ってからのわたしの口癖「営業は科学だ」はこのころから始まった。

第六話終わり