パーソナルツール
現在の場所: ホーム 書庫 moichiro 営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第三話

営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第三話

作成者 admin 最終変更日時 2010年02月15日 17時53分

第三話「アプローチブックとの出会い」

 

 研修のおかげで、「お願いセールス」からの脱却の第一歩は始まったが、「および」はいつもあるわけではなく、6ヶ月の予算を達成するには、検討するそぶりさえ見せないお客さまのニーズを掘り起こし、多くの商談に参画することが必要だった。わたしのテリトリーには、200社ほどの新規対象の企業があり、その80%は他社の複写機を使っていた。当時の複写機の平均使用期間は約3年、1社1台使用とすると(当時のわたしが担当していた新規対象先はほとんど1社1台使用だった)、計算上は160台の複写機が3年で入れ替わることになる。入れ替えが平準化しているとすると、半年では26台が入れ替わる。このうち60%を取ると15.6台、「および」が平均月1件くらいあったので、これを確実に契約できれば、半年で20台強となり、予算の最低値はクリアできるレベルとなる。だから、お客さまのニーズを掘り起こし、自社主導で商談をスタートさせることが重要だった。自社主導でスタートさせられなくても、少なくとも商談の始まりには声がかかるようにしておきたかった。持込デモだけに頼らず、どうニーズを掘り起こすか?ここがポイントだった。この時に出会ったのが、「アプローチブック作成・活用」研修であった。

 「アプローチブック作成・活用」研修は、当時の大阪支社の「ロー・プロッド者研修」(ロープロダクティビティ者研修:低営業生産性者研修)として実行された。わたしはまだ、「売れないセールス」の1人であったから、当然召集された。京都から大阪の研修所に行く時の足取りの重いこと、いまでも鮮明に記憶している。「また、さんざん言われていやな思いをして帰るのか。また給料ドロボーって言われるかな」なんて思いながら着いてみると、一人の小柄な講師が待っていた。ずいぶん童顔でニコニコしていた。ほっとした。研修はすぐ始まり、まず、営業としての午前中の時間の使い方について、さまざまなデータをだして、解説があった。ほとんどの企業の重要な決定は午前中になされている。人間の頭脳の働きも午前中にピークを迎える。なんてことが講義された。「そんなこと言われても困る。午前中はみんな(同僚)との大切なお茶の時間だ」と思った。当時は今と比べるとのんびりしていたものだ。もっとも頭の働く時間は、おしゃべりに使っていたのだから。だからだろうか、もちろん、喫茶店での話はいつも盛り上がった。

 さて、いよいよアプローチブックの作成に入っていった。「みなさん、明日からの自分の営業活動で使うアプローチブックを作ってみましょう」と講師から言われ、「アプローチブックならもうあるのに」とぶつくさ言いながら、とりあえず、カタログをシートホルダーに差し込んで、完成させた。このアプローチブックを見て、童顔の講師の顔が変った。「だから売れないんだ。これはカタログを差し込んだだけだ。なんの印象もお客さまに残らない」。そして講師が、ある生命保険の営業マンのアプローチブックを見せてくれた。これには驚いた。カタログなんてまったく使っていない。自己紹介から商品紹介まですべて自分で撮った写真で作ってあった。導入してくれたお客さまの声もお客さまの写真が添えられ載っていた。最後のクローズ(お客様に決断を迫ること)のページでは、「時は金なり」を強調するため、「時は」の後に本物の一万円札が貼ってあった。すべてこのような手作りだった。この講師が言うには、とにかくおもしろくて目立つこと、文字は最小限(1ページ10文字以内)にしてとにかく絵でわからせる、手作りであること、ストーリーがあること、だった。これはおもしろいとわたしは思った。持込デモだけに頼らず、どうニーズを掘り起こすか?このテーマの解決策の一つになりそうな気がした。この日のわたしは、どういうストーリーのアプローチブックを作るか、それをずっと考えた。そして、後は宿題ということで、1ヵ月後の再会を誓って解散した。

 翌日からストーリーどおりのアプローチブックを作るため、保守のエンジニアさんの拠点や営業所のなか、お客さまが複写機の前で困っている姿などを同期の女性社員に協力してもらって、写真を撮った。お客さまが気づいていない、感じていない複写業務の問題点をさまざまなシーンとしたたくさんの写真を揃え、アプローチブックを作っていった。複写機の設置スペースを原寸大の厚紙で作成して綴じ込んだりもした。厚さが7~8センチ、A4版のアプローチブックが完成し、さっそく使い出した。お客さまに見せると、おもしろがっていただいた。そしていろいろと複写業務の問題点について、話してくれる。アプローチブックそのものが興味の対象になり、その会社の営業マンを集めて、説明したこともあった。もちろん複写機は導入いただいた。

 アプローチブックを作成する過程で、わたしのなかに「お客さまにどうアプローチし、どう提案していくか」というセールスストーリーが確立していった。何種類か作成するうちに、わたしのセールスストーリーは多彩になり、聴くスキルと相まって、いろいろなバリュエーションでお客さまのニーズを掘り起こせるようになった。「持込デモだけに頼らず、どうニーズを掘り起こすか?」という問題はだんだん解決されだした。自然と、他社の複写機から自社のものに置き換える(当時はダウンPPC※1)と呼んでいた)件数が増え、営業所の新規担当では最高のダウンPPC台数を達成したときもあった。このときのアプローチブックはわたしの宝物である。いまも大切に保管しているし、よく取り出して見ている。 質問中心の面談技術とこのアプローチブックのおかげで、わたしは「日本一売れないセールス」から「普通のセールス」になった。しかし、販売量向上よりもわたしがうれしかったのは、「持ち込みデモ」がすべての状態から、ニーズを発掘する方法が習得でき、お客様から嫌がられなくなったことだった。お客様を訪問することが苦痛でなくなってきた。知らないうちに「お願いします」も連呼しなくなっていた。

 ※1 PPC:Plain Paper Copierの略、乾式普通紙複写機のこと

第三話終わり

第四話に続く・・・