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営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第二話

作成者 admin 最終変更日時 2010年02月15日 17時39分

第二話「聴くこととの出会い」

 「日本一売れないセールス」はショックだったが、わたしの行動は変らなかった。いままでと同じ活動を続けたままだった。次の週末を楽しみに一週間を耐え、金曜日夜はルンルン、土日はあっという間に過ぎ、日曜日の夜から、くらーい顔になる。「日曜洋画劇場」のエンディングテーマが始まるともうだめだった。「これで寝たら、明日からまた仕事が始まるのか。」という暗澹たる気持ちだった。いまでもなぜか「日曜洋画劇場」のエンディングテーマはにがてである。

 さて、「日本一売れないお願いセールス」であったわたしであるが、変身の大きなきっかけと出会ったのもこのころであった。一つは質問中心の面談技術研修であり、もう一つは、「アプローチブック作成・活用」研修であった。

 まず、この面談技術研修との出会いからお話しよう。当時のわたしは、「お願いセールス」を繰り返していたものの、心のどこかで「ほんとうの営業は違うのではないか?」という思いを抱いていた。漠然とではあるが、定式化された手法のようなものを求めていたのかもしれない。底辺をさまようことで、「喉が渇いている」状態つまり原理原則やセオリーのようなものの受け入れ態勢が整ってきたわけである。この時に出会ったのが、質問中心の面談技術研修であった。たまたま、新人研修以来のリフレッシュ研修が行われ、そのカリキュラムの中心となっていたのである。久しぶりに同期と会えることを楽しみに出かけた研修であったが、おみやげは大きなものだった。 

 

office

 

 この研修は、「お願いセールス」のわたしには、すべて新鮮な内容であった。特に質問のしかたには、「目から鱗が落ちる」ような衝撃を覚えた。わたしはお客様に全然質問しないセールスだったからだ。質問をすると面談そのものを打ち切られてしまうのではないかという心配のため、早く伝えたいことを話してしまおうという気持ちにいつも駆られていた。 その質問のしかたは、お客様からニーズ(こうしたいという要望や期待)を引き出すために、「お客様に自由に話してもらう拡大質問」と「お客様の返事を限定した限定質問」を繰り返していくスタイルである。例えば、拡大質問とは、「そのことについてもう少し具体的にお話しいただけますか?」というふうに相手に自由に話してもらう質問だ。限定質問は逆に、「このようなことでお困りではないですか?」と相手の答えを限定してYes、Noを確認する質問である。この2つの質問を自分が有しているお客様の情報とお客様の質問への答えに合わせて、駆使し、ニーズを明らかにしていく。ニーズが見えてきたら、それに合わせて商品の特徴と利点を説明する。お客様はニーズが満たされ、満足して契約してくれる。この当たり前のことが腹に落ちたのがこの研修だった。砂地に水が沁み込むがごとく、この研修の質問する技術はわたしに吸収されていった。

 営業所に戻るとさっそく学んだスキルを使うチャンスがきた。わたしのテリトリーのあるお客様から引合(お客様からの導入検討の意思表示)があったのだ。当時はお客様から引合があると「および」と呼んでいた。この「および」の商談の場で、いままでだったら、まず商品を紹介していたところだが、ぐっとこらえて、まずお客様に質問をしてじっくり話を聴くと、よく話してくれた。聴いていないことまで話していただき、お客様のニーズ・置かれた状況の全体がわかった。お客様のニーズや状況に合った形で商品を紹介すると納得してくれ、話はとんとん拍子に進み契約の運びと成った。いままで「および」商談で競合負けしたり、時間がかかっていたのが嘘のようだった。「および」での受注率が高まり、毎月の「ぼうず」(月に1台の契約も取れないこと)の心配が少なくなった。「お願いセールス」から「聴くセールス」への脱却の第一歩が始まった。 いま思うと、この「聴くということ」は「後だしジャンケン」を営業活動で行うことのように思う。「後だしジャンケン」と言ってもお客様を騙すような姑息なことを行うわけではない。質問すること、お客様の話をしっかりと聴くことで、お客様がグー・チョキ・パーのどれを出したがっているかを知った上で、一呼吸遅れて、こちらから提案を出すということだ。当然商談は決まりやすくなる。競争相手が通常の商品紹介型の営業をおこなっていたら、この勝負はさらに有利になる。

 この「聴くということ」の重要性は計り知れないことだった。この後、わたしは、さまざまな商談で経験を積み、聴く技術を磨いていった。後年、富士ゼロックスの営業教育の仲間たちとこの聴く技術を科学的により高度化し、洗練することで、ソリューション営業のアプローチセオリーを開発するに至った(詳しくは第十話でお話しする)。

 また、「聴くということ」は営業という世界だけでなく、ビジネス全般、いや人生で出会う様々な方との人間関係構築にも大きな影響力を持っている。このことに気づいたのは、28年後にカウンセリングを学んでからだが、ともかくも「自分が話す」のではなく、「まず人の話を聴く」という習慣をこの時期から始めることができたことは、家庭生活・職場の人間関係・多くの交友関係を築くことに関しても大きな貢献をしてくれた。

第二話終わり

第三話に続く・・・