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営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道I-第四話

作成者 admin 最終変更日時 2010年03月01日 09時22分

第四話:「営業はゲームだ」

第四話 「営業はゲームだ」

 やっと「お願いセールス」から脱却でき、「普通のセールス」になったわたしであるが、毎期の予算はやっと達成できるかどうかといった状態だった。しかし、わたしと一緒に配属された同期入社のK君とY君は、わたしの遥か先にいた。かれらは常にトップクラスの成績を残し、自信に溢れていた。わたしはこの同期の2人から多くの贈り物をいただいた。K君からは後年、営業教育の世界に入った時に教育の開発と実施のイロハを。そして、Y君からは営業のおもしろさを。

 さて、今回はY君からいただいた「営業のおもしろさ」について話そう。

 Y君は、いつもすばらしい営業実績を残し、輝いていた。初めは「担当地域がそうさせているのだろう」くらいに思っていたが、高業績が続き、自信に満ちた本人を見るにつけ、「わたしとなにが違うのだろうか?」と自然に思うようになった。仲の良い同期であるが、一緒に飲む時に仕事の話をしても、なんか違うことは感じたが、なにが違うかというと、見えてこなかった。そうこうしているうち、幸運なことに、わたしはY君の所属するチームに異動となり、その上、Y君の担当地域の後任となったのである。わたしは、Y君が担当したユーザー(Y君が新規開拓したところが数多くあった)と開拓途上の新規先を引き継いだ。当然、それらの担当先への引継ぎ同行が必要となった。Y君と打合せして、まとめて3日間同行することとなった。京都市内から京都府郡部にかけて、一社一社同行しながら、Y君がそれぞれの企業にどのような営業活動をしてきたか、これからどうすべきと考えているか、つぶさに聞き、見ることができた。

 Y君と同行して感じたのは、彼が常に相手の行動を予測して動いていることだった。相手とは担当企業の決裁者や担当者、競争相手の営業マンなど商談にかかわる方々である。Y君はこれらの方の行動を「自分だったらどうする?」、「自分の会社だったらどう動くか?」という観点で考え、予測していた。その予測に基づいて、次の行動を決めていた。相手の行動を予測しづらいときは、まずそのために必要な情報を収集していた。今で言う「仮説検証型営業」の一部である。彼の営業活動の一端をもう少し具体的に話すと以下のような感じである。

 競争相手のA社と競合状態になっている商談先を訪問する時は、まず競争相手の行動を予測する。面談では、競争相手のA社が次回話すであろうことを先回りして顧客担当者に、「A社さんは次ぎこんなことを言ってきますよ。なぜならば…ですから」と話してみる。この予測が当たると次回訪問時には、担当者から「Yさんの言うとおりだったよ」という言葉が戻ってくる。もちろん担当者が上司を説得するための情報提供も欠かさない。自分が担当者だったら、上司だったら、こういう情報を欲しがるであろうと予測して、提供する情報も用意する。お客さま側の行動が予測できないときは、自社の購買担当者に同じような状況下での行動を聞いてみて、予測する。

 このような面談を繰り返すことで担当者からの信頼感が深まり、商談はY君のペースとなる。このストーリーを同行中に何回も見せてもらった。そこで、Y君がわたしに言った言葉は「営業はゲームだよ」であった。「相手の出方を予測して、手を打っていく。その結果を踏まえて次の手を打って行く。これこそゲームだろう。自分が予測して、狙ったとおりのストーリーで契約が取れた時なんか最高だよ。もちろん勝つこともあれば、負けもする。でも、負けたって殺されるわけじゃないし、予測していくと、より多く勝てるようになるよ。たくさん勝てば、会社からも表彰されるだろう。真剣勝負の白熱したゲームをやりながら、給料も貰え、表彰もされる。こんなおもしろいことないだろう。」

 Y君のこの話はわたしの営業スタイルに大きなインパクトを与えた。今までの肩に力を入れていた自分からすうーっと余分な力を抜いてくれた感じだった。「そうだ、営業はゲームなんだ。思い切ってやろう」と思った。そして、自分を同じ状況に置いてみて予測するこのやり方は、その後のわたしの仕事に大きな影響を与えてくれた。特にマネジメント領域で。営業マネージャーとして、また、複数部門が協業するプロジェクトのリーダーとしても。

 さて、Y君のやり方を適応しだすと、競合商談に強くなり、競争相手に勝つことが増えていった。負けにくくなったと言ってもいいかもしれない。一生懸命育成してきた商談を、いざ検討という段になって競争相手にとられてしまうことが多かったわたしであるが、「勝つべくして勝つ」術の一端を憶えたのである。

 このころから日本企業にファクシミリが普及しだした。わたしの担当地域でもファクシミリの全国一括契約という話が始まりだした。当然商談規模も大きいし、競争も激しい。質問中心の面談技術、アプローチブック、「勝つべくして勝つ」術を活用して、わたしでもファクシミリの一括商談を受注することができるようになっていった。なんどか受注できると「勝ちパターン」が身に付き、得意技となっていった。いつのまにか、予算の達成はそんなに難しいものではなくなっていた。

 そして、わたしにとって、営業という仕事は「おもしろい」仕事となってきた。

第四話終了