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営業マン蘇生の物語-おもしろい営業への道II-第五話

作成者 admin 最終変更日時 2011年03月03日 18時45分

第5話「反乱勃発」

 

 効果的な営業活動には「計画」が必要だ。私は自分の経験を活かし、メンバーに週間計画・月間計画を立ててもらうようにした。だが、こうした活動に慣れていない彼らは、なかなか実のある計画を立てることができなかった。


 ある日、私はベテランの長沢くんの週間計画を見て、ついムッとしてしまった。今週は「4台死守します!」と書かれている。単純に台数を書くのではなく、4台売り上げるためにどのような手を打つのかを書け、と何度もコメント欄に記入して返したのに、また同じことを書いてきたのだ。 「4台できなかったら本当に死ぬのか? 安易に死守などという言葉を使うな!」

 腹が立っていた分、コメントはストレートできつくなった。


 計画づくりを徹底させるため、私はこんな提案をした。

「毎週金曜日は外出するのをやめて、計画を立てる日にしよう。外での活動は週4日でいいから、金曜には提案書づくりや資料集めとか、来週の準備を全部すませちゃえ。そうすれば、土日に気持ちよく休めるよ」

 金曜にお客さまとの約束が入っている場合は、私が自らお客さまに電話し、延期してもらうようにした。要するに、私は事実上、金曜外出禁止令を発したのである。


 メンバーの中には、「来週のことを全部決めておくと、やるべきことがはっきりして資料を忘れることもないし、ほんと安心です」などと言ってくれる人もいた。『これはうまくいったかな』と、私はひそかに喜んでいた。


 ……が、甘かった。しばらくたったある日、私が営業所に帰ると、“異変”が起こっていた。


 営業所の中はがらーんとしている。いるのは事務の女性一人。

『あれー、どうしたんだ!?』

 電話が鳴った。事務の女性が私に取り次ぐ。

「長沢です。交差点のところのファミレスで待ってますから来てください」

「えっ、なんなんだよ。何言ってんだよ」

「来てもらえばわかります」


 そこで私を待ち受けていたのは、怖い顔をした営業所のメンバーたちだった。

「所長の言うことは正しいかもしれません。でも、僕らは所長の言うことにはなっとくできないんです!」

 長沢くんはそう食ってかかった。きっかけは、例の金曜外出禁止令だった。営業は外に出てこそ営業、その自分たちを外に出さない営業所長なんておかしい、というのだ。一瞬、私の頭には「4台死守」と書かれた長沢くんの計画がよぎった。


「僕らの成績がイマイチだった時とか、何か困ったような時に所長、ポリポリ頭をかくんですよね。あの癖はすごい不愉快です!」

 そんなことまで言われた。つまり、私はつるし上げられたのである。

 ファミレスでの反乱はおよそ2時間にわたった。私としては、皆のために自分のノウハウを提供したつもりだった。それなのに、と私は腹の中が煮えくり返るような思いである。加えて、部下に造反されたという胸の奥からせり上がってくる苦い味……しかし、ぐっとこらえていた。


「君たちの言うことはわかった。でも、計画を立てることだけは譲れない。原則として金曜日の午前中は外出してもいいことにして、午後は計画づくりに使ってほしい。午後にお客さまのアポがあってやむを得ない場合、それは認めるよ」

 大幅に譲歩はしたが、私は基本路線を変えず、結局この線でメンバーたちとは合意した。


 翌日の朝、私の気分は最悪だった。最寄り駅から歩いて10分ほどの道のり、営業所に着くまで私は3回吐いてしまった。だが、マネジャーとして今後も仕事をしていくには、この朝が勝負だ、と私は電柱についた手に力をこめた。


「おはよう!」

 きょうの自分は顔面蒼白だろうと思いつつも、力を振り絞って声だけは元気よく発した。

「おはようございます」

 私の第一声に、メンバーたちもそれなりに応えた。もちろん、お互い気まずい感じは否めない。それでもいつものように1日は始まった。


 その日、私はメンバーの一人に同行した。

「この間の金曜に入ってたお客さんのアポ、オレが断っちゃったけど、あれ、悪いことしたな。あのさ、思ってることを率直に聞かせてくれないかなぁ?」

「いや実は、計画を立てることそのものは、僕はいいと思ってたんです。でも、営業やってて、会社から出ちゃいけないと言われるなんて初めてだったんで……やっぱりちょっとショックでした」

 同行の時や、個別に活動をすり合わせる時など、一人ひとりと話しながら、私はメンバーと関係を修復していった。計画を立てることがメンバーの成功につながるということは信じていた。ただ、目的は正しくても、メンバーの気持ちを考えれば、もっと時間をかけたり、別のやり方もあったのかな、と反省したのである。


 結局、一部の人を除いて、基本的にメンバーたちは合意したことをその後きちんとやってくれた。マグマが噴出して何かが吹っ切れたのだろうか、反乱は収拾し、活動は少しずつ回るようになっていった。


第五話「反乱勃発!」 終わり