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波蘭通信 第3回

作成者 admin 最終変更日時 2010年02月15日 17時52分

波蘭通信第3回:ポーランド人の名前

 

 ポーランドにいると、同じようなファーストネームの人が沢山いるのに驚かされます。自分の部下でも、男性ではグジェゴシュ(英語で言えばグレゴリー、以下同じ)、クシストフ(クリストファー)、ピオトル(ピーター)、アンジェイ(アンドリュー)、トマシュ(トーマス)、女性ではモニカ(英語でも同じですね)、アガタ(アガサ・クリスティのアガサ)、アグネシュカ(アグネス)、アニャ(アン)なんかが複数、あるいは多数います。ちなみに筆者の会社は日本風に大部屋方式なので、もうそこらじゅうにアガタさんやピオトル君が居ます。

 アメリカに住んでいたときにももちろん一般的な名前と言うのはありました(ジョンとかジムとか)が、こんなに重複することはなく、ファーストネームを言えばすぐに誰のことか分かりました。

 なぜこんなに同じ名前になるかというと、ポーランドでの名前の付け方によります。ポーランドでは子供が生まれますと、取りあえず仮の名前をつけます。そして、その後にその子供の守護聖人を選び、その守護聖人にちなんだ名前を改めてつけるんですね。守護聖人は365日の各日ごとにいるので、その日がその子供の名づけの日になります。例えば、部下の一人は生まれてすぐにクシストフという名前をもらいましたが、それとは別に特定の日を選んでその日の守護聖人にちなんだダリウシュという名前がつけられました。で、その日には親戚があつまって命名を祝うんですね。その後も、物理的な誕生日はどこかへ行ってしまって、命名の日が毎年のアニバーサリーはなるんです。ということで、同じ名前の人は同じアニバーサリーと言うことになりますし、こっちの方の名前が一般的に通用するものになります。法律的にはどちらも効力があるようですが。まあ、国民のほぼ100%がカソリック教徒であるお国ならではあります。

 また、理屈上は365個以上の名前はつかなくなるはずですが、どうも重複もあるようで実際は多少多いようです。それでも、日本のように新しい名前を考え出すと言うことは原則的に不可能というか理解不能かもしれません。それでも、時代により人気のある名前というのもあるらしく、そのため同じようなファーストネームが氾濫するというわけです。

 その代わり、ファミリーネームは実に種類が多く、部下の中で重複している例はありません。英語圏でのスミスとかブラウンなんていう、「よくある」姓というのはちょっと思いつきませんね。同僚の一人にミコワイチャクというのがいて、これが昔のポーランドの首相の名前と一緒だったので関係を聞いてみましたが、正確には首相の方はミコワイチクで、別な姓だったこともあります。

 面白いのは、ポーランドでは官庁へのいろいろな届出の際に、本人についての他、父親の名前とか母親の名前、はては母親の旧姓まで聞かれるんです。これは推定ですが、一つには苗字はともかくファーストネームはこれだけ同じものが多いため、本人を特定するためにはここまで聞かないといけないということかと思います。 もう一つは、住民把握の整備の歴史が浅いということが考えられます。日本の戸籍制度は世界でも完成度が極めて高いと言われていますが、それでも戦後の混乱期には戸籍を買うことが可能だったと言われています。まして、ポーランドなんかは前回書いたような事情から、住民の移動が極めて激しく、また記録の散逸も多かったはずですから、こういう方法でしか本人確認ができなかったんじゃないかと思いますね。

 名前一つからも、その国の事情がいろいろ垣間見えるものです。